無尽灯

医療&介護のコンサルティング会社・一般社団法人ロングライフサポート協会代表理事 清原 晃のブログ
高齢社会、貧困、子育て支援などの様々な社会課題が顕在化しつつあります。このような地域社会の課題解決に向けて家族に代わる「新しい身寄り社会」を創造する取り組みとして、2011年から①身元引受サービス②高齢者住宅低価格モデルの開発③中小零細高齢者住宅事業支援サービスを掲げた「ソーシャルビジネス」にチャレンジしています。

カテゴリ: 未来の日本

介護離職














スウェーデンには介護離職がないと言われます。日本は年間10万人を超える状況です。何が違うのでしょうか?

スウェーデンの社会福祉について次のように述べられています。
「介護離職」がないスウェーデン、年間10万人を超える日本 何が違う?
ヨミドクター2024.4.19 

「スウェーデン人は、長年税金を払い続けてきたのだから社会保障は権利であると、保障を受けることに堂々としています。そして、国の政策を信頼しています。そのため、家族に頼ろうという姿勢の高齢者には出会ったことがありません。」

「スウェーデンでは介護離職はありません。スウェーデンでは、パートナーや親子であっても、介護は介護する側が希望する場合にのみ行われます。そして、終末期においては、家族や大切な人と最期を共に過ごすために、医師が終末期ケアと認定することで、給料の8割が社会保障制度から出ます。さらに、自宅でも施設でも病院でも、ケア(医療と介護)はスタッフが行うため、家族は自分が大切な人と過ごしたいと思う時間にいることができ、何かしなくてはいけないことはありません。 」

次の表は日本とスウェーデンの国民負担率の国際比較です。
国民負担率(租税負担率+社会保障負担率)と潜在的国民負担率(国民負担率+財政赤字対国民所得比)を比較すると日本では2024年度は45.1%と50.9%、スウェーデンは2021年度で同55.0%と55.6%となります。国民負担率で10%、潜在的国民負担率で約4%の違いしかありません。
国民負担率国際比較2


















両国の比較は文化も歴史も違う為、一概には言えませんが、社会福祉のあり方を抜本的に見直さねばならないのではないでしょうか。

「国によって、高齢者介護のあり方と高齢者の心構えがこんなにも違うことに驚きます。超高齢社会を上手に乗り越えるために、日本は発想の転換が必要かもしれません。(宮本)」という意見に同意します。

「介護離職」がないスウェーデン、年間10万人を超える日本 何が違う? https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20240410-OYTET50001/ ヨミドクター2024.4.19   
 日本には、家族を介護するために自分の仕事を辞める「介護離職」をする人が1年間に10万6000人(2022年)います。男女ともに55~59歳の割合が高く、介護する人にとっても、社会にとっても大きな損失です。   

高齢者介護・保護の責任は市町村   
スウェーデンでは、親を介護する義務は法律になく、親の介護は「完全なる子どもの自由意思」です。また、「社会福祉法」には、「高齢者介護・保護は社会福祉を担う市町村の責任で行われる」とあり、家族はその責任を求められません。しかし、病気の子どもは親にケアされる権利があり、親は社会保障費をもらって入院中の子どもに付き添います。      

高齢者の介護義務に関する両国の法律は正反対です。日本では、保護する責任のある者が保護を怠れば犯罪になりますが、スウェーデンでは高齢者介護・保護は社会福祉を担う市町村の責任です。そのため、日本の法律は介護離職の要因になりますが、スウェーデンの法律は介護の犠牲者を生みません。日本の法制度は見直す必要があるのではないでしょうか。   

国によって、高齢者介護のあり方と高齢者の心構えがこんなにも違うことに驚きます。超高齢社会を上手に乗り越えるために、日本は発想の転換が必要かもしれません。(宮本)
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持ち家高齢者の死亡リスク













今までこのような調査について聞くことはありませんでしたが、高齢者の死亡リスクについて認識を改めさせて頂きました。   

千葉大学と東京大学の研究者が高齢者約4万4,000人を9年間追跡調査し、暮らしている住宅の種別と死亡リスクの関係を検証したところ、死亡リスクは持ち家が最も低く、民間の賃貸住宅より公的賃貸住宅が低いことが分かったとのこと。   

大変有意義な調査だと思います。高齢者の死亡リスクは持ち家が最も低いというデータにやはりかとうなずけるところが大きいです。現在の高齢者世帯は、持ち家比率が高く約8割が持ち家に居住していると言われます。日本が長寿社会と言われる要因がここにあるのでしょうか。しかし、約2割の人が賃貸であり、特に低所得の高齢者の賃貸に住む死亡リスクが高まっているとも言えそうです。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・   
高齢者の死亡リスク、持ち家が最も低く、次いで公的賃貸住宅
大学ジャーナルオンライン編集部 2024.4.20  
 千葉大学予防医学センターの花里真道准教授と東京大学先端科学技術研究センターの古賀千絵特任助教が高齢者約4万4,000人を9年間追跡調査し、暮らしている住宅の種別と死亡リスクの関係を検証したところ、死亡リスクは持ち家が最も低く、民間の賃貸住宅より公的賃貸住宅が低いことが分かった。    
千葉大学によると、花里准教授らは日本老年学的評価研究が65歳以上の高齢者を対象に実施した調査のデータを利用し、自立して生活している全国9市町村、合計4万4,007人を2010年から9年間追跡して居住する住宅の種別と死亡リスクの関係を検証した。    

追跡期間中に1万638人が死亡したが、検証の結果、死亡リスクが最も低かったのは持ち家に住む高齢者であることが分かった。賃貸住宅で暮らす高齢者の死亡リスクは持ち家より高かったが、公的賃貸住宅に居住する高齢者は民間やその他の賃貸住宅に比べ、有意に低かった。
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24-4-18障害事業人員不足














 福祉の現場の存続が益々厳しい状況に置かれている。福祉医療機構の調査で人材不足がより深刻な状況に陥っていることが報告されている。職員の不足を訴える事業所は52.6%と過半数を超えている。職員確保が厳しい要因としてはやはり「他産業よりも低い賃金水準」を多くの事業所が訴えている。介護の事情と同じである。

 22年度の決算では人件費の高騰により赤字の事業所が増えていることも報告されている。介護も障害もそれに従事する人の確保がままならず、こもままでは維持すらできないような状況に陥っていく。   
公的支援に頼らざるを得ない事業の存続が危ぶまれる。   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・   
障害福祉事業所、職員不足52.6% (福祉医療機構調査)
福祉新聞2024.4.16  
 障害福祉サービス事業所のうち、職員の充足状況について「不足している」とした事業所が52・6%だったことが3月29日、福祉医療機構(WAM)の2023年度調査で分かった。   

20年度に実施された同じ調査と比べ2・4ポイント上昇した。職員不足を理由に利用者の受け入れ制限をする通所事業所は16・4%で、20年度調査と比べ7ポイントも増えた。   

職員確保が難しい要因(複数回答)としては「他産業よりも低い賃金水準」(68%)を挙げる事業所が20年度調査よりも12ポイント増えている。   

また、22年度決算が赤字の事業所は、生活介護が31%、就労移行支援と就労継続支援A型事業がそれぞれ45%となっており、前年度よりも人件費比率が上がり、赤字事業所も増えた。
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ケアマネのシャドーワーク議論














 日本介護支援専門員協会・柴口里則会長がケアマネのシャドーワークを「できるだけなくすべき」と論じていますが、その程度のお話でしょうか?  
 
 会長は「あわせて、シャドーワークをできるだけ少なくすべきだと訴えていきます。地域で高齢者を支えるための活動が、無償というのはやはりおかしい。報酬なしで色々任される、という点に問題があるのではないでしょうか、我々は介護支援専門員の活躍の場を増やし、報酬を引き上げ、社会的な評価を高めていくための提言をしていくつもりです」と言われていますが、シャドーワークの中身を真っ先に協会が全国調査をすべきではないでしょうか?   

 小手先で解決できるような問題でしょうか?あまりに安易に考えているのではないでしょうか?問題はもっと本質的な社会の変質とそれに対応するための新しい社会制度作りにあるのではないでしょうか?その最前線で起きているケアマネのシャドーワークを「できるだけなくすべきだ」というレベルで簡単に考えるべきではありません。   
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ケアマネのシャドーワークを「できるだけなくすべき」 協会が新たな検討会で訴えること    
介護のニュースサイト JOINT2024.4.15  
 今年度はケアマネジャーにとって大きな節目となりそうだ。介護保険制度の要が様々な困難に直面しており、国は対策を議論する有識者会議を15日から始動する。【Joint編集部】   

柴口会長はケアマネの業務範囲の問題について、「シャドーワークをできるだけ少なくすべき」と強調。「介護支援専門員の職責を狭くするというより、その重要な役割に見合う対価を求めるべきと考える」と述べた。
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独居高齢者官房長官のずれ














2050年には全世帯に占める「1人暮らしの世帯」の割合は2020年の38%から増加を続け、2050年には44.3%となると推測されることが話題となっています。   

 これまでの家族を中心とした社会から一人一人を支える社会に大きく舵を切らざるを得ません。識者がこぞって単身社会に向けて何が必要かを説いています。 NHKの4月12日の【将来推計】2033年に1世帯平均2人未満に 未婚の高齢者も急増  によれば、各識者が次のように述べています。
 ①推計を行った「国立社会保障・人口問題研究所」藤井多希子室長によれば、「現在、50歳前後の団塊ジュニア世代は未婚者の割合が高く、このまま高齢化すると身寄りのない人が増えていく。1人暮らしの高齢者を支えるためには介護だけでなく、金銭の管理や意思表示など日常生活をサポートする仕組みを早急に考えていく必要がある」
 ②日本福祉大学教授 みずほリサーチ&テクノロジーズ主席研究員 藤森克彦さん 「日本はこれまで介護や育児について家族の役割が大きい社会といわれてきたが、単身の世帯は家族が果たしてきた役割を担う人がいなくなるので、これまでの考え方を見直す必要がある」
 ③独居高齢者の問題に詳しい日本福祉大学教授でみずほリサーチ&テクノロジーズ主席研究員の藤森克彦さんは次のように話しておられます。 『世帯の単独化』について 「日本はこれまで介護や育児について家族の役割が大きい社会といわれてきたが、単身の世帯が増えれば家族が果たしてきた役割を担う人がいない世帯も増えることになるので、高齢者を支える社会の仕組みについては家族を前提にしたこれまでの考え方を見直す必要がある」
 高齢者は賃貸住宅への入居を断られるケースも多く、住まいの確保が問題となる中、国は物件を貸し出す大家の不安を解消するため都道府県が指定する「居住支援法人」が入居後の見守りなどのサポートも行う住宅の普及を進める方針です。   

「居住支援法人」とは 「居住支援法人」は住む場所に困っている人をサポートするため、2017年に改正された(平成29年)住宅セーフティネット法に基づいて各都道府県がNPOや社会福祉法人などを指定し国が補助金を出す仕組みで、去年12月末時点で(2023)全国で769の法人が指定されています。 
 高齢者をはじめ、障害者やひとり親世帯などの「住宅確保要配慮者」を対象に、
▽入居前の住宅に関する相談や物件の紹介から、
▽入居後の見守りや家賃の債務保証を行うほか、
▽亡くなった後の葬儀の手続きなどを行う法人もあります。
  それに対して残念なのは「社会保障を持続可能なものに改革」の林官房長官の談話です。 
 林官房長官は、12日の午後の記者会見で「単身で暮らす高齢者を含めて誰もが住み慣れた地域で孤立せず安心して暮らせる社会にしていくことが必要だ。社会保障制度を持続可能なものとするための改革を行っていくことに加え、地域で住民が互いに支え合い、共に暮らしていく『地域共生社会』の実現に向けて取り組んでいく」と述べました。
※地域で住民が互いに支えあい、共に暮らしていく『地域共生社会』の実現に向けて取り組んでいくと述べたということに、時代の流れを正しくとらえきれていない施政者の問題点が指摘されるところです。地域で住民が互いに支えあう時代ははるか前に通り越していることに気づいていないのである。既に個がバラバラとなってきており、家族をベースとした社会基盤が壊れているに、何をもって地域共生をつくるというのか。この時代感覚の差が単身社会への具体的制度設計を遅らせているのではないでしょうか。 

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