無尽灯

医療&介護のコンサルティング会社・一般社団法人ロングライフサポート協会代表理事 清原 晃のブログ
高齢社会、貧困、子育て支援などの様々な社会課題が顕在化しつつあります。このような地域社会の課題解決に向けて家族に代わる「新しい身寄り社会」を創造する取り組みとして、2011年から①身元引受サービス②高齢者住宅低価格モデルの開発③中小零細高齢者住宅事業支援サービスを掲げた「ソーシャルビジネス」にチャレンジしています。

カテゴリ: 身元引受

広がるか、ケアマネの保険外サービス 厚労省が書類作成や郵便受取、救急車同乗を「対応し得る」と整理 介護のニュースサイト Joint 2024.12.17

ケアマネジメントの課題と向き合う検討会を今年春から開催してきた厚生労働省は、これまでの議論をまとめた報告書(中間整理)を12日に公表した。【Joint編集部】   

利用者・家族のニーズに応える努力の結果として大きく広がったケアマネジャーの業務を、大きく4つに分類。法定業務の範囲を超えているものを、下表のように「保険外サービスとして対応し得る」「他機関につなぐべき」などと初めて位置付けた。  
ケアマネの業務分類 
























ケアマネの保険外サービスの議論がまとめられて、ケアマネが「保険外サービスとして対応し得る」とされる業務が整理されたようですが、従来業務に毛が生えた程度で果たしてシャドゥ・ワークが改善されるのでしょうか?   

郵便の発送・受取、書類作成・発送、代筆代読、緊急搬送の同乗が主な事例として挙げられたようです。他機関につなぐべき業務が圧倒的多数で、果たして他機関はこれを消化できるのでしょうか?他機関とは誰を指すのでしょうか?絵空事でしかないような内容かと思われます。他機関へつなぐべきとすれば、誰がどの業務を行うのかを明確にする必要があります。
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様々な身元引受事業者がでてくるなかで、多くの方々が身元引受とはどのようなサービスなのかを測りかねています。それだけ新しいビジネスであり、広範囲にわたるサービスであるため、その本質が掴めていないと感じます。     

 前にも紹介をした身元保証事業のビジネスモデル分析として、上智大学 栃本一三郎社会福祉学科教授の論文 「市場化する社会保障・社会福祉と身元保証制度からみる消費者保護の在り方についての覚書より」 が、最もこの事業を的確に分類したものとして評価をされるのではないでしょうか。

 身元保証事業のビジネスモデルはかなり確立されつつあるが、フルパッケージ型の身元引受サービスは少なく、その中心核は金銭管理であるということがあまり知られていません。     

栃本教授の調査分析により、現状の身元引受サービスのビジネスモデルのあり様が示されています。 教授は4つのタイプに事業者を分類しています。

1.独立型 
2.身元保証+生活支援型 
3.準包括パック型 
4.包括パック型 となります。       

1.独立型 身元保証人になることのみを事業       
2.身元保証+生活支援型 転院等手続きのフォロー、緊急時の病院への駆けつけ、治療方針・ケアプラン等の説明への同席、病院等への外出の付き添い、日常的な見守り、金銭管理・支払い 、代行などの生活支援を別途用意している。     
3.準包括パック型 身元保証人になることとその他の生活支援がほぼパックとなっている      
4.包括パック型・・・すべてを包括している  

この中で包括パック型は数が極端に少ないということが明らかになりました。それによって何が問題になるのか。問題はサービスが断片化してしまうということです。      
包括パック型身元引受



























包括パック型のボトルネックとなっているのは、金銭管理を通帳やキャッシュカードをお預かりするレベルで委託されていないということに尽きるでしょう。 金銭管理を行わないサービスは結局、身元引受も死後事務委任も生活支援も相続も都度実費請求をして行うか預り金をいただいておくというというようなことが必要になるため、サービスとしての一体性がなくなってしまうのです。   

包括パック型のサービスをして顧客の満足度を高めるためには相当の信用と高い運営ノウハウが必要となります。そのことを改めて感じる次第です。
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身元保証ガイドライン表紙














今年になってから議論となっていました高齢者等終身サポート事業(身元引受事業)のガイドライン案が9日に開かれた「孤独・孤立対策推進本部」の初会合で示されました。今月1日に施行された孤独・孤立対策推進法に基づいて設置されたもので、スピード策定といえます。岸田首相は「誰ひとり取り残さない社会の実現に向けて協力をお願いしたい」と述べたが、いよいよ本格的に民間の身元引受事業が始まることになります。   

ガイドライン案は当協会が14年間の身元引受事業で積み重ねてきた内容とほぼ合致する内容となっていますので、ひとまず安心というところ。
身元保証事業ガイドライン 














 

契約締結にあたって留意すべき事項  
○ 契約締結にあたって、事業者は、民法や消費者契約法に定められた民事ルールに従いつつ、契約内容の適正な説明(契約書・重要事項説明書を交付した説明)を行うことが重要。また、医療・介護関係者等との連携や、推定相続人への説明など、きめ細かい対応を行うことが望ましい。  
○ 寄附・遺贈については、契約条件にすることは避けることが重要であり、遺贈を受ける場合も公正証書遺言によることが望ましい。 等   

契約の履行にあたって留意すべき事項   
事業者の体制に関する留意事項   
○ 利用者が安心して利用できるよう、ホームページ等を通じた情報開示、個人情報の適正な取扱い、事業継続のための対策、相談窓口の設置に取り 組むことが重要。   
○ 契約の履行にあたっては、契約に基づき適正に事務を履行するとともに、提供したサービスの時期や内容、費用等の提供記録を作成、保存、定期的 な利用者への報告が重要(後見人にも情報共有が重要)。利用者から前払金(預託金)を預かる場合、運営資金等とは明確に区分して管理する ことが望ましい。なお、履行の際にも医療・介護関係者等との連携が重要。   
○ 利用者からの求めがあれば、利用者が契約を解除する際に必要な具体的な手順等の情報を提供する努力義務を負う。   
○ 利用者の判断能力が不十分となった場合、成年後見制度の活用が必要。成年後見人等が選任された後は、契約内容についてもよく相談することが 望ましい。 等

身寄りのない高齢者への生活支援 国が事業者向けガイドライン 
朝日新聞デジタル2024.4.19
 身寄りのない高齢者の生活支援に携わる民間事業者の増加を受け、政府は19日、「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」案を示した。利用者と事業者との間のトラブルを防ぐ狙い。来月18日まで意見を公募して正式に策定する。

ガイドライン案では、「利用者の尊厳と自己決定を尊重」と明記。契約書を作成することや、提供したサービスの時期や内容、費用を記録して保存することなど、事業者が留意するべき事項を定めた。利用者から前払い金を預かる場合、運営資金とは明確に分けて管理することも求めた。
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当協会の身元引受のエリア別利用者数を分析してみました。やはり圧倒的な割合で首都圏が増加中です。

エリア別利用者割合
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日常生活支援の限界














社会福祉協議会で行っている「福祉サービス利用支援事業」で高齢の利用者から預かった通帳から270万円を横領する事件が起きました。以前も同様の事件が起きていますが、金銭管理サービスの難しさが指摘されます。   

「福祉サービス利用支援事業」は日常生活自立支援事業における福祉サービス利用援助事業の内容であり、対象者は判断能力が不十分な者であり、かつ本事業の契約の内容について判断し得る能力を有していると認められる者。令和 5 年 3 月末時点の実利用者数は、56,550 件(同比 1 件増)、内約4割が生活保護と、近年は横ばいの傾向が続いていますが、この背景には、本事業が補助事業であり、予算上の制約等から支援を担う職員体制の拡充が難しいことがあげられます。
日常生活支援事業













  

本事業の実施主体は都道府県・指定都市の社協ですが、事業の一部を委託された基幹的社協(市区町村社協)数は、前年度比 18 増の 1,596 社協になりました。従事職員では、専門員(4,016 人、同 219 人増)は増加した一方、実際の支援の担い手である生活支援員は 1 万 5,388 人と減少(同 365 人減)しています。   
日常支援事業推移















ニーズは日に日に増加するサービスですが、その担い手は不足しており、むしろ減少傾向にある、福祉サービス利用者の希望者との乖離は続く一方となっています。社協だけではこの任務を負うことは困難になっています。特に金銭管理の難しさには社協だけでは耐えきれないでしょう。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・   
社協職員が福祉サービス悪用、預かった通帳から270万円横領 30代男性を懲戒解雇 錦江 
 南日本新聞 2024/04/02     
鹿児島県錦江町社会福祉協議会は1日、高齢者の通帳から約270万円を引き出し横領したとして、30代男性職員を3月31日付で懲戒解雇処分にしたと発表した。全額弁済され、刑事告訴はしない。    
町社協によると、男性は高齢者らの金銭管理を手伝う「福祉サービス利用支援事業」で町内の80代男性の家族から通帳を預かり、2023年11月~24年2月、二つの口座から11回にわたり計約270万円を不正に引き出した。  

80代男性が利用する町外のグループホームの職員が指摘し、今年3月18日に発覚した。本人に確認したところ「借金の返済に充てた」と横領を認めたという。
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