無尽灯

医療&介護のコンサルティング会社・一般社団法人ロングライフサポート協会代表理事 清原 晃のブログ
高齢社会、貧困、子育て支援などの様々な社会課題が顕在化しつつあります。このような地域社会の課題解決に向けて家族に代わる「新しい身寄り社会」を創造する取り組みとして、2011年から①身元引受サービス②高齢者住宅低価格モデルの開発③中小零細高齢者住宅事業支援サービスを掲げた「ソーシャルビジネス」にチャレンジしています。

カテゴリ: 成年後見人制度

首長申し立て成年後見人の限界














西日本新聞5月3日に「成年後見 首長申請1万件」との記事が掲載されました。

「認知症や知的障害など判断能力が不十分な人の財産管理や生活を支援する成年後見制度で、本人や親族らに代わって居住地の市区町村長が利用開始を家庭裁判所に求める「首長申し立て」が2025年、制度開始以来初めて1万件を超えたことが2日までに最高裁の統計で分かった。全体の申立件数のうち、4分の1近くを占めた」とのこと。

 その背景には孤立する高齢者の増加があるものとみられます。制度が始まった2000年には23件であった首長申し立ては25年は1万139件と過去最高になり、25年度全申立件数は約4万3千件に比較するとその割合は23.7%を占めるようになっています。家裁別にみればその割合が多いのが青森が45.0%、次いで徳島43.4%、最も低いのが京都で11.4%です。

 当然比率の高い自治体では負担が増加しているものと推測されます。民間の身元引受サービスとの併用等、総合的に取り組みが進められるべきかと考えます。

 現在国で制度の見直しが進められていますが、政府が4月に閣議決定した民法改正案では「終身制」を廃止し、判断能力に応じて分かれている「後見」「保佐」「補助」の3類型を症状が軽い人向けの「補助」に一元化して個々の事情に応じたオーダーメード型の支援を可能にする内容になると言います。具体化するまでにまだ多くの時間を要すのではないかと思われますが、尚更のこと、民間サービスを取り入れた弾力的運用に改編すべきと考えます。
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市長申立て成年後見は万能ではない














市長申立て成年後見人の選任について問題点が指摘されるようになりました。下記の記事が掲載されていましたが、成年後見「市長申立て」トラブルが顕在化してきています。

成年後見「首長申し立て」トラブル 港区長が第三者調査を表明

2026年4月8日 14時00分 朝日新聞

編集委員・森下香枝
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以下、市長申立て成年後見の問題点を整理しておきたいと思います。

港区のニュースは、成年後見制度の運用、特に行政が主導する「首長申し立て(市長申し立て)」の在り方に一石を投じる事実に注目が集まっています。

身寄りのない高齢者や判断能力が不十分な方を守るための最終的なセーフティネットであるはずの首長申し立てですが、その運用にはいくつかの構造的な課題が潜んでいます。主な問題点を整理しました。

1. 後見人選任プロセスの不透明性とミスマッチ

首長申し立てでは、実務上、家庭裁判所が選任する後見人の候補者を自治体側が推薦(あるいは調整)することが多くあります。

  • 適性の判断不足: 本人の生活実態や細かいニーズよりも、事務的な効率や順番待ちの状況で選任されるケースがあり、本人と後見人の相性や専門性の不一致(ミスマッチ)が起こりやすい側面があります。
  • 第三者チェックの欠如: 今回の港区の件でも指摘されているように、選任後の活動内容を自治体が十分にモニタリングする仕組みが弱く、不適切な対応があっても表面化しにくいのが現状です。

2. 「身上保護」の軽視と事務的対応

本来、後見業務は「財産管理」と「身上保護(生活や療養に関する配慮)」の二本柱です。

  • 事務処理の優先: 首長申し立てで選任される専門職(弁護士・司法書士等)や市民後見人の一部において、通帳の管理などの財産管理に偏り、本人の意思尊重や生活の質の向上(身上保護)が後回しにされる傾向があります。
  • 孤立の継続: 「後見人がついた」という事実だけで行政側の支援が一段落したと見なされ、本人が社会的に孤立したまま放置されるリスクがあります。

3. 報酬助成制度の限界

首長申し立てが行われる対象者は、低所得者や生活保護受給者が少なくありません。

  • 報酬支払いのジレンマ: 本人に報酬を支払う資力がない場合、自治体が助成金を出しますが、その予算には限りがあります。これが原因で、質の高い、手間のかかる支援を継続的に行う動機付けが働きにくいという構造的課題があります。

4. 権限の行使と本人の権利制限

市長申し立ては、本人の同意がなくても進められる「職権」に近い性格を持っています。

  • 自己決定権との葛藤: 本人の意向に反して施設入所が強行されたり、住み慣れた自宅が処分されたりする場合、それが真に「本人のため」なのか、行政側の「管理の都合」なのかという境界線が曖昧になることがあります。

5. 自治体の担当部署の専門性とリソース不足

  • 異動による継続性の断絶: 自治体の担当者は数年で異動するため、長期にわたる後見事案の経緯や、後見人との信頼関係を維持することが困難です。
  • 指導・監督体制の不備: 申立人としての責任(後見人が適切に動いているかを確認する義務)を果たすための専門知識や人員が不足している自治体が多く、トラブルの芽を早期に摘み取れない体制の問題があります。

まとめ
今回の事案は、首長申し立てが単なる「手続きの完了」をゴールにしてしまい、「選任された後見人が適切に機能しているか」という事後評価(モニタリング)が機能していなかったことを示唆しています。

市長申し立ては万能な解決策ではなく、むしろ行政側がより強い責任を持って、後見人の活動を監視・支援する仕組み、あるいは第三者機関によるチェック体制の構築が急務であると言えます。


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成年後見制度見直しスケジュール













成年後見人制度の見直しには相当の時間がかかるように思いますが、どのようなスケジュールで進められ、その見通しについて考察をしてみます。

 

成年後見制度の見直しについて 現時点で明らかな「法定のスケジュール」 は次のとおりです(2026年2月時点の公開情報に基づくまとめです):

 

1. 2025〜2026年度にかけた法制審議会での審議

  • 法務省は 成年後見制度の根本的な見直し(民法改正)を法制審議会への諮問事項 として提示し、
    その審議が 2025年度(令和7年度)を中心に進められている段階です。
  • 2025年6月に 「中間試案」 が取りまとめられ、
    パブリック・コメント(国民からの意見公募)が 2025年8月25日まで実施されました。
  • 2026年1月〜2月には、法制審の部会が 要綱案を取りまとめ、法務省に提出 しています。

 

 つまり、2025年度のうちに要点部分の整理を終え、
 2026年度(令和8年度)に向けて最終答申・法案化 という流れで進んでいます。

 

 2. 今後の想定されるスケジュール(概略)

現時点の報道や法務省発表から整理すると、次のような流れが見込まれています:

  1. 2026年前半
     ・要綱案をもとに民法改正案の最終調整
     ・政務・省内調整
  2. 2026〜2027年(令和8年度)
     ・国会提出(法案として国会に上程)
     ・審議〜成立
  3. 成立後の施行時期
     ・公布後、施行まで数か月〜1年程度を見込む必要がある 

「2026年度中に結論を出す(法案成立まで)」ことが政府・法務省の目標として示されている軸 になっています。

 3. なぜこのスケジュールなのか?

政府側がこの時期を目標にしている背景には次が挙げられます:

  • 高齢化と認知症増加の社会的ニーズ
    →
    制度の見直しと利用促進が求められている事情。
  • 第二期成年後見制度利用促進基本計画(令和8年度まで)
    →
    この計画の対象期間に合わせて制度見直しの方向性をまとめるという位置づけがある。 

 4. ただし注意すべき点

  「答申・法案成立が確定した」という段階にはまだ達していません。
 法制審の要綱案は法務省に提出されましたが、国会審議に入るまでには、政府内の調整・与党間調整・国会議論が必要です。

 

 法案化〜成立〜施行までには時間差が生じるケースが多い制度改正です。
 法務制度に関わる改正は国会審議が長期化する可能性があるため、
 実際の施行は 2027年以降までずれ込むこともあり得ます。


 まとめ(スケジュール感)

項目

進行状況・時期

中間試案・パブリックコメント

2025年(実施済)

法制審での要綱案まとまる

2026年初頭

国会提出・審議

2026年度(令和8年度)以降 見込み

法案成立

2026〜2027年のいずれか

施行

成立後、準備期間を経て開始予定


 

 補足

制度見直しは、単なる条文化だけでなく

  • 家庭裁判所での運用フロー
  • 任意後見との連携
  • 本人意思尊重の原則
    など、現場での実務ルールまで整理する必要があり、
    最終の制度設計や実施時期まで決まるには数年を要する可能性が高いです。
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成年後見人のオーダーメイド型転換は可能か?














①【成年後見制度見直し】自己決定尊重、議論進まず 海外では「任意」主流に  中央大研究開発機構教授 新井誠氏の論調と 

②成年後見制度、現行から大転換の可能性…今後は「終身型」から「オーダーメイド型」へ、新要綱「3つの柱」を司法書士が解説  

の2つの解説がでていますが、果たして日本の成年後見人制度はどこに向かって行くのでしょうか? 

特に②の解説ではこれまでの3類型の廃止と補助への一本化(必要な場面・必要な範囲に限って支援する)という方向が検討されているといいますが、これまでの強権的な制度から任意性の制度に代わることで民間の身元引受との差は埋まるのでしょうか?

今まで公開されている情報から今後本当にオーダーメイド型に変更が可能なのか?又、弁護士や司法書士等士業後見人は臨機応変の対応が可能なのか? 制度の見直しについて議論の行方と今後の見通しについて考察していきます。
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日本の成年後見制度の見直し議論(2026年現在)について、公的制度の方向性と民間支援(身元引受など)との関係を踏まえた見通しを整理すると、次のようなポイントが浮かび上がっています。

1. 法定後見制度の大転換 ― 終身制からオーダーメイドへ
現在、法務省の法制審議会がまとめた民法改正要綱案では、成年後見制度を大きく変える方向性が示されています。 主な柱は次の通りです。

A. 「後見・保佐・補助」の3類型の廃止 → 「補助」に一本化 → 個別の法律行為ごとに支援を限定する形に。(例:不動産売却だけ/遺産分割だけ) この一本化は、従来の包括的代理を見直し、必要に応じて支援範囲を細かく設定するものです。

B. 「終身制」の廃止 → 途中で終了可能に → 一度後見人が付けば本人の死まで継続という旧来の仕組みから、状況に応じて終えられる制度へ。要件と裁判所の判断が介在します。

C. 本人の意思を重視した意思決定支援 → 補助人は本人の意思確認・尊重が制度趣旨として明示される方向。これまでよりも本人の判断を尊重する設計です。

2. 「任意後見制度」の議論が進まない?
中央大・新井誠教授が指摘しているように、海外のような任意ベースの支援(任意後見や契約的支援)の普及議論は十分には進んでいません。 特に任意後見の利用促進策についての検討が不十分だという指摘があります。

任意後見は、本人が元気なうちに契約しておくタイプの後見で、自己決定や任意性の点では高評価される一方、制度周知や活用促進策の遅れが課題とされています。

3. 旧制度との比較:公的 vs. 任意/民間 現行の法定後見は 家庭裁判所が選任 事実上終身利用 包括代理が中心 という点が「硬直的」と指摘されてきました。 これに対して、 任意後見制度や民間の身元引受・契約支援(民間サービス) は 本人と支援者の契約で開始 必要に応じて支援内容を調整可能 民間ならではの柔軟性がある という性質です。

今回の法制審側の要綱案は、「支援の範囲・期間を本人の状況に合わせて柔軟化する」方向ではあるものの、 公的制度と民間契約型の区別が完全に無くなるわけではありません。

➡ 公的な後見制度は法的代理権の付与・監督という性質が強く、民間サービスは基本的に契約と当事者間の合意関係です。

4. 「オーダーメイド型」は本当に実現可能か?
要綱案が現在提示しているのは「方向性」であり、条文化と運用ルールの詰めが今後の課題です。 実現可能性については以下がポイントです。

✔ 「補助」一本化の仕組みを制度化できるか
✔ 裁判所の関与(代理権の付与・終了判断)の運用の柔軟性
✔ 「本人の意思尊重」を実務でどこまで徹底するか これらは法改正後の運用設計次第であり、現状の報道や議論だけでは最終仕様は確定していません。

5.弁護士・司法書士等専門職の対応能力
弁護士・司法書士などの専門家は、現行制度でも後見・保佐・補助・任意後見のいずれでも関与しますが、次の点は議論されています。

可能性
法定後見制度より細かな支援設計が可能 本人・家族との継続的な関係構築 支援範囲の明確化に伴う専門性発揮

課題
裁判所の監督と調整が依然必要  
一人ひとりのケースに合わせた柔軟対応には時間とコストがかかる 意思決定支援を実務で徹底するための現場力が問われる つまり、制度が「オーダーメイド型」になったからといって、専門家の力量次第で格差が生じる可能性は依然あります。 丁寧な支援設計と本人意思確認の手続きが不可欠です。

結論 — 日本の成年後見制度はどこへ向かうのか?
現行の終身型・包括代理中心の硬直した構造は明確に見直しが進んでいます。 法制審案は「本人の意思尊重・支援の柔軟化」を制度の中核に置こうとしているものの、海外の任意ベース支援が主流になるような完全なシフトではありません。

任意後見制度の利用促進や民間契約型支援との役割分担の明確化は、これからの運用設計次第です。

公的制度(法定後見の見直し)と民間契約型支援(任意後見/身元引受など)は補完関係として位置づけられる可能性が高い一方、制度としての線引きや兼ね合いは引き続き議論の対象になります。

以上のような根本的議論を短期間で収束させ、国民が納得できるような制度に改編することは並大抵のことではありません。恐らく、議論は数年に及び2030年代以降になる可能性が出てきています。
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成年後見と身元引受の整理












後見より身元引受が適しているケース整理」と「後見を使わない合理的理由(本人利益)について整理します。


感情論ではなく、法務・行政・医療が「反論しづらい整理」で整理します。


1. 後見より「身元引受」が適しているケース整理

ポイントは
「後見=権利制限」「身元引受=生活支援」
という本質の違いです。


ケース① 判断能力はあるが、身寄りがない高齢者

状況

  • 認知症なし、または軽度
  • 自分の意思は明確
  • ただし家族・保証人がいない

なぜ後見は不適切か

  • 成年後見は「判断能力の低下」が前提
  • 財産管理・契約権限を奪う制度
  • 本人の自己決定権を過度に制限

身元引受が適している理由

  • 本人の意思に基づく民事契約
  • 必要な手続きだけを代理・補助
  • 権利制限が一切ない

※「判断能力がある人に後見を付けること自体が制度趣旨に反する」


ケース② 生活支援・緊急対応が主目的の場合

状況

  • 入院時の連絡先
  • 施設入所時の身元保証
  • 退院・転院・死亡時対応

なぜ後見は不向きか

  • 後見人は「身元保証人」ではない
  • 日常の即応対応は義務ではない
  • 実務は後見人がやらない/やれない

身元引受が適している理由

  • 24時間連絡体制
  • 緊急時の即応
  • 病院・施設との実務対応に特化

 ※後見は「管理」、身元引受は「現場対応」


ケース③ 財産額が小さい・管理が単純

状況

  • 年金収入のみ
  • 預貯金が少額
  • 大きな財産処分の予定なし

なぜ後見は過剰か

  • 後見報酬が継続的に発生
  • 家裁報告・事務負担が大きい
  • 本人利益より制度維持が優先されがち

身元引受が適している理由

  • 必要最小限の支援
  • コストが明確・限定的
  • 本人の生活費を圧迫しない

※「守るための制度」が生活を圧迫する本末転倒


ケース④ 本人が後見を望んでいない

状況

  • 「財産を管理されたくない」
  • 「自由を奪われたくない」
  • 「裁判所が関与することへの拒否感」

なぜ後見は問題か

  • 本人の意思に反して選任されることがある
  • 解除が極めて困難
  • 一度始まると“終わらない制度”

身元引受が適している理由

  • 契約に基づく任意サービス
  • 解約・変更が可能
  • 本人意思を最大限尊重

※憲法13条(個人の尊重)に最も近い支援形態



2. 
後見を使わない「合理的理由(本人利益)」


理由① 成年後見は「本人利益」より「制度安全」を優先する

  • 後見人の判断基準は
    ※「本人の最善利益」ではなく「法的安全性」

結果として、

  • リスクのある選択を避ける
  • 本人の希望より保守的判断
  • 生活の質(QOL)が下がる

身元引受は、

  • 本人の意思を起点
  • 生活目線での支援
  • 選択肢を残す

理由② 後見は一度始めると戻れない

  • 後見開始=権利制限の固定化
  • 判断能力が回復しても終了困難
  • 本人の「やり直し」が効かない

身元引受は、

  • 状況に応じて柔軟に変更
  • 必要になれば後見に移行可能

※「不可逆制度」を安易に使わないのが本人利益


理由③ 本人の尊厳・自己決定権の確保

  • 後見=代理決定
  • 身元引受=意思支援

これは国際的にも重要視されています。
(障害者権利条約・意思決定支援の流れ)

※時代は「代行」から「支援」へ


理由④ コストと生活の持続性

  • 後見報酬:月2~6万円+諸費用
  • 長期化すると生活費を圧迫

身元引受は、

  • 費用体系が明確
  • 支援内容に応じた対価
  • 生活の持続性を確保

※本人利益とは「生活が続くこと」


まとめ

成年後見は「判断能力が低下した場合の最終手段」であり、判断能力が保たれている高齢者や、生活支援・身元保証が主目的の場合には、民事契約に基づく身元引受サービスの方が
本人の意思・尊厳・生活の持続性を守る点で合理的である。



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