無尽灯

医療&介護のコンサルティング会社・一般社団法人ロングライフサポート協会代表理事 清原 晃のブログ
高齢社会、貧困、子育て支援などの様々な社会課題が顕在化しつつあります。このような地域社会の課題解決に向けて家族に代わる「新しい身寄り社会」を創造する取り組みとして、2011年から①身元引受サービス②高齢者住宅低価格モデルの開発③中小零細高齢者住宅事業支援サービスを掲げた「ソーシャルビジネス」にチャレンジしています。

カテゴリ: 医療・介護制度

<前回に続く「なぜ国は根本対策を打ちにくいのか、本当の根本問題について」
本当の根本問題3













3.なぜ国は根本対策を打ちにくいのか

以下の要因が考えられます。

財源制約

抜本改革は給付拡大や人員増を伴い、財源問題に直結します。

有権者構造

高齢者は最大の有権者層。
負担増や給付削減は政治的に極めて困難。

制度疲労の認識不足

「崩壊」という言葉を使うと制度不信につながるため、
危機表現が弱くなる。

縦割り行政

介護、生活保護、地域福祉、後見制度、住宅政策が分断。

4. マスコミの責任について

マスコミ、とりわけ経済紙である 日本経済新聞 は、

  • 速報性
  • 政策動向
  • 会議資料の整理

に重点が置かれます。

構造批判や制度哲学まで踏み込む論説は紙面制約上少ない傾向があります。

ただし、本来であれば、

  • なぜシャドーワークが生じるのか
  • なぜ受験者が減るのか
  • 制度設計のどこが限界か

まで掘り下げるべきなのですが、残念ながら国に遠慮して追求をしません。
メディアが政策発表の伝達者にとどまると、社会的議論は深まりません。

5.本当の根本問題は何か

核心はここからです。

介護保険は「身体介護中心モデル」のまま、
生活困窮・孤立・認知症社会に対応できていない。

つまり、

  • 医療モデルから生活モデルへの転換不足
  • 生活支援の制度的担保が弱い
  • 家族消滅社会への制度設計が未完

です。

この点は、我々が展開している
身元引受・金銭管理・死後事務まで含めた包括支援モデル
制度の穴を補完していることからも、現場はすでに答えを出し始めていると言えます。


6.このまま進むとどうなるか

  • ケアマネ不足受け皿縮小
  • 重度者集中事業所疲弊
  • 不適切ケア増加
  • 介護離職増
  • 地域包括の機能不全

介護保険は静かに機能不全化する可能性があります。

7. では何が必要か

抜本的には、
 ①ケアマネ業務の再定義(生活調整機能の制度化)
 ②シャドーワークの公的評価と報酬化
 ③地域単位の生活支援専門職の創設
 ④身元保証・金銭管理・後見との制度的接続
 ⑤財源議論の正面化

「運用改善」ではなく
制度哲学の再設計が必要な段階に来ています。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

最後に

我々はこの問題に対して批判ではなく、
「制度崩壊の予兆」に対する危機感を強く感じています。

本当に問われているのは、

誰が生活の責任を引き受けるのかという社会の根幹です。

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<前回に続く>
シャドーワーク対策はまぜ根本を無視するのか?

















2. 
シャドーワークは制度のの可視化

ケアマネがシャドーワークとして担っているとされる

  • 買い物同行
  • 部屋の片付け
  • 徘徊捜索
  • 家族トラブル調整
  • 金銭管理相談

これらは本来、

  • 地域福祉
  • 家族支援
  • 生活困窮支援
  • 成年後見制度
  • 見守り体制

が担うべき領域です。

つまりシャドーワークとは
「制度の隙間に落ちた生活課題の受け皿」になっているということです。


制度横断の問題なので、単一省庁の対策では解決できない。
そのため「市町村で対応」という抽象論に留まっているのが実情でしょう。



3. ケアマネ減少の本質

数字的危機は明らかです。

  • 従事者数ピークアウト
  • 受験者6割減
  • 業務負担増
  • 報酬単価は高くない
  • 責任は重い

つまり、

責任は重いが、裁量も報酬も社会的評価も見合っていない

専門職の持続可能性が崩れている状態です。

さらに、

  • 利用者の重度化
  • 家族機能の消失
  • 生活困窮の複雑化

により、
ケアマネは「生活支援総合調整官」のような役割を担わされています。

これは制度設計上想定されていませんでした。

<次回最終稿は「なぜ国は根本対策を打ちにくいのかと本当の根本問題について」述べます。

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支援の再設計













厚生労働省が示した、住宅型有料老人ホーム入居者に特化した新たなケアマネジメント類型創設の方針は、介護業界に大きな波紋を広げている。

一部では「居宅介護支援の正常化」と評価する声もある。確かに、住宅型ホームにおけるケアマネジメントは、移動効率や加算取得の容易性など、在宅と比較して収益構造上の優位性を持っていたことは否定できない。

しかし私は、この改正の本質は「在宅回帰」ではなく、「支援構造の再設計」にあると考えている。


住宅型モデルの是正がもたらす影響

住宅型有料老人ホームやサ高住は、身寄りのない高齢者や中重度層の重要な受け皿となってきた。

もし今回の新類型創設により収益構造が急激に変化すれば、

  • 中小法人の経営悪化
  • 介護人材の流出
  • 入居者の住み替え困難
  • 医療連携の断絶

といった連鎖的影響が生じかねない。

制度の歪みを是正することは必要である。しかし、その結果として供給基盤が不安定化すれば、地域包括ケアの理念自体が揺らぐ。


在宅の現実は理想ほど軽くない

「在宅へ戻るべきだ」という議論は理解できる。だが、在宅現場の実態は厳しい。

ケアマネジャーは、

  • 家族調整
  • 未払い問題
  • 緊急搬送立会い
  • 医療同意の相談
  • 死後事務の問い合わせ

など、制度外業務に日々追われている。

いわゆるシャドウワークは増加する一方で、報酬はそれを十分に評価していない。

この状態で在宅シフトを強めれば、燃え尽きと離職はさらに進むだろう。


問題の本質は「責任の集中」

私が15年以上、身元引受・金銭管理・死後事務支援に携わる中で痛感してきたのは、
ケアマネに責任が過度に集中しているという現実である。

今後増加するのは、

  • 身寄りのない単身高齢者
  • 軽度認知症+家族疎遠
  • 医療同意や財産管理を伴う複合ケース

である。

これらはケアプラン作成のみで解決する問題ではない。


実践例:多層型支援モデルの構築

当協会(一般社団法人ロングライフサポート協会)では、約300名の身元引受実績の中で、以下の構造を構築してきた。

金銭管理のクラウド化

毎月の収支明細を可視化し、通帳残高と連動。
ケアマネが金銭トラブル対応に追われる事態を減らす。

医療同意・緊急対応の契約整理

事前合意書を整備し、搬送時の混乱を回避。

死後事務の事前契約化

親族探索や葬儀手配の混乱を未然に防ぐ。


地域包括との情報共有

ケアマネ単独ではなく、包括・医療機関と分担。

この分業構造により、ケアマネは本来業務に集中できる環境が整う。


必要なのは在宅回帰ではなく責任の分散

今回の新類型創設が目指すのは囲い込み是正である。しかし、
本当に是正すべきは「ケアマネに過度に集中した責任構造」である。

今後の制度設計には、

  • ケアマネ報酬の再評価
  • シャドウワークの制度化
  • 身元保証機能の公的認証
  • 民間支援機関との連携指針

を同時に進める視点が不可欠である。


結論

在宅か施設かという二項対立では、問題は解決しない。

問われているのは、

地域で高齢者を支える責任をどう分散し、持続可能な構造に再設計するかである。

制度是正は必要である。
しかし、それは供給崩壊や人材流出を伴ってはならない。

今こそ、ケアマネを中心とした単層構造から、多層型地域支援モデルへの転換を議論すべき時である。

理念ではなく、実装を。
是正ではなく、再設計を。

それが、現場に立つ者としての私の提言である。

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在宅回帰は本当に解か?














厚生労働省が打ち出した、住宅型有料老人ホーム入居者に特化した新たなケアマネジメント類型の創設方針は、介護業界に少なからぬ衝撃を与えている。


一部では、これを「居宅介護支援の正常化」と歓迎する論調もある。とりわけ、住宅型ホームに依存したケアマネ経営モデルが制度の歪みを生んできたとの指摘は、一定の説得力を持つ。確かに、移動効率の高さ、加算取得の容易さ、高介護度利用者の集約など、在宅と比較して収益構造上の優位性が存在してきたことは否定できない。

しかし、ここで立ち止まって考えるべきは、「是正の方向性」ではなく、「是正の方法と影響」である。


是正は正義か、崩壊の引き金か

住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅は、現在の高齢者居住インフラの中核を担っている。特に中重度層や身寄りのない単身高齢者の受け皿として、現実的な機能を果たしてきた。

この領域の収益構造を急激に変更すればどうなるか。

中小法人の経営悪化、介護人材の流出、施設閉鎖、入居者の住み替え難民化——
制度是正が供給崩壊を招けば、それは政策的成功とは言えない。

「在宅へ戻るべきだ」という主張は理念としては理解できる。だが、受け皿が整っていない在宅に戻すことは、現場への負担転嫁にすぎないのではないか。 


独立居宅はすでに限界にある

現実には、独立系の居宅介護支援事業所は減少傾向にある。多くが医療法人や介護法人グループの傘下に組み込まれ、単独での採算確保が困難な構造が定着している。

在宅モデルは、移動時間、家族調整、未払い対応、緊急搬送立会いなど、制度外業務が膨大である。いわゆるシャドウワークは増える一方で、報酬はそれに見合っていない。

この現実を無視して「在宅回帰」を促せば、人材流出はさらに進むだろう。


問題の本質は囲い込みではない

今回の議論は、「囲い込み是正」に焦点が当たりがちである。しかし本質はそこではない。

真の課題は、
ケアマネに集中しすぎた責任構造の歪み にある。

今後増加するのは、

  • 身寄りのない単身高齢者
  • 軽度認知症+家族疎遠層
  • 医療同意・金銭管理・死後事務が複合するケース

である。

これらはケアプラン作成だけで解決する問題ではない。
生活支援、法的支援、金銭管理機能まで含めた構造整備が必要である。


必要なのは多層型プラットフォーム

ケアマネがケアマネ業務に専念できる環境を整えるためには、次の再設計が不可欠だ。

  • 金銭管理・身元保証の専門化
  • 死後事務の事前契約化
  • 医療同意問題の整理
  • 地域包括との役割明確化
  • 民間支援機関との制度的連携

地域包括支援センター、社会福祉協議会、医療機関、介護事業所、そして民間の身元引受・保証機関を含めた「多層型地域支援プラットフォーム」の構築こそが急務である。

制度是正と同時に、責任分散の仕組みを設けなければならない。


急ぐべきは改正か、それとも構造改革か

今回の新類型創設は、制度の偏りを是正する契機となり得る。しかし、周辺制度の整備なき改正は、結果として介護供給体制を不安定化させる危険を孕む。

いま問われているのは、在宅か施設かという二項対立ではない。

問われているのは、地域で高齢者を支える構造をどう再設計するかである。

理念的な「在宅回帰」だけでは、持続可能な介護は実現しない。

必要なのは、ケアマネの労力と責任に見合う報酬体系と、多層的な支援基盤である。

制度の適正化は重要だ。しかし、それは現場の崩壊を伴ってはならない。

今こそ、部分修正ではなく、構造改革の議論を始めるべき時である。


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新ケアマネ類型創設提言書







住宅型有料老人ホーム入居者向け新ケアマネ類型創設に関する提言書

― 制度是正と介護崩壊回避を両立するための構造改革提案 ―

1.はじめに

厚生労働省は、住宅型有料老人ホーム入居者に特化した新たなケアマネジメント類型の創設方針を示した。
制度の歪みを是正し、囲い込み構造を是正するという問題意識は理解できる。

しかしながら、本改正が十分な移行設計と補完制度を伴わない場合、介護産業全体の持続性を揺るがしかねない重大なリスクを内包している。

本提言は、「制度適正化」と「現場崩壊回避」の両立を目的とするものである。


2.現行制度の問題点(是正の必要性)

現行の住宅型・サ高住モデルにおいては、以下の構造的偏在が生じていた。

  • 高介護度利用者の効率的集約

  • 移動コストの極小化

  • 加算取得の容易性

  • 施設側へのトラブル転嫁

これにより、居宅介護支援の収益性が在宅と比較して著しく高まる構造が形成されてきた。

この点の是正は一定の合理性を有する。


3.しかし看過できない三つの危機

(1)住宅型・サ高住の大量淘汰リスク

住宅型有料老人ホームおよびサ高住は、高齢者居住インフラの重要な受け皿である。

急激な収益構造の変更は、

  • 中小法人の経営悪化

  • 介護人材の離職加速

  • 入居者の住み替え困難

  • 医療連携の断絶

を招きかねない。

制度是正が供給崩壊を招いては本末転倒である。


(2)独立系居宅支援事業所は既に衰退局面

現在、独立系の居宅介護支援事業所は減少傾向にあり、多くが医療法人・介護法人グループ傘下に組み込まれている。

すでに在宅単独モデルは採算が厳しい構造にある。

単純な「在宅回帰」論では持続可能性は担保できない。


(3)在宅ケアマネの限界

在宅領域では制度外業務が膨張している。

  • 家族調整

  • 金銭未払い対応

  • 身元保証問題

  • 緊急搬送立会い

  • 死後事務相談

これらはいわゆる“シャドウワーク”であり、報酬体系に反映されていない。

この負担を放置したまま在宅シフトを促せば、さらなる人材流出を招く。


4.本質的課題:責任構造の空白

今後急増するのは、

  • 身寄りのない単身高齢者

  • 軽度認知症+家族疎遠層

  • 医療同意・金銭管理・死後事務が複合するケース

である。

ケアマネ一職種に生活・法的・金銭的責任まで集中させる構造自体が限界に達している。


5.必要なのは「多層型地域支援プラットフォーム」

以下の分業構造を制度設計に組み込むべきである。

① ケアマネはケアマネ業務に専念

② 金銭管理・身元保証は専門機関

③ 死後事務は事前契約化

④ 医療同意問題の制度整理

⑤ 地域包括との接続ルール明確化

地域包括支援センター、社会福祉協議会、医療機関、介護事業所、そして民間の身元引受・保証機関を含めたプラットフォーム整備が急務である。


6.段階的移行と補完制度の整備を

本改正を進めるのであれば、同時に以下を実行すべきである。

  1. 居宅介護支援報酬の抜本見直し

  2. シャドウワークの制度化

  3. 身元保証機能の公的認証制度創設

  4. 住宅型ホームへの移行緩和措置

  5. 民間支援機関との連携指針策定


7.結論

新類型の創設は、制度の適正化という観点では理解できる。

しかし、構造設計なき是正は介護供給体制を不安定化させる可能性が高い。

今求められるのは、

「在宅回帰」ではなく、「支える構造そのものの再設計」である。

介護崩壊を防ぎつつ持続可能な地域包括ケアを実現するため、制度改正と並行して多層型支援基盤の整備を強く提言する。

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